アートとリサーチ ワークショップ

インタビュー:松樹恒史さん (3月21日)

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松樹さんとは2011年に石巻で出会った。今回のリサーチの発端となった出会いである。
石巻に行ったのは津波の被害にあった地域をちゃんと見ておきたかったから。この思いは阪神大震災にさかのぼる。震災後に知り合った大阪の友人に被害の様子を見に行っていないことを伝えると、彼女は「物見遊山でもなんでもいいから、見ておいて欲しかった」と言われたのがずっと心に残っていたからだ。
松樹さんは北海道曹洞宗の第2宗務所の青年部を連れて、月命日の法要に来ていた。快くマイクロバスに乗せてくれて、一緒に各地を移動した。かつて市場だった場所に土葬されているご遺体にお参りしたり、帆立貝を育てている漁師さんにお話を聞きに行ったり、住宅地でないことから当時まだほとんど手付かずだった気仙沼を歩いたりした。
そのときにお坊さんたちと話したことが、そのままリサーチのテーマになっている。
松樹さんとは稚内への移動中にたくさんお話することができた。曹洞宗の教えや仲間たちを愛する気持ち、厳しい修行を経たことによって得られる強い心の芯とプライド、組織的にも繋がりが強い宗派であることを活かし、西へ東へ人の力になろうと赴くフットワークの軽さ。多くの方から慕われる人となりを改めて知る。
印象的だったのは「大切な方を失った人とどう接するのか」と尋ねたとき。しばらく考えた後ポツリとこう仰った。
「どんなふうに生きていても、時間は進んで行くから。現実は動いて行くからね」
その後無言だった松樹さんから、私は、人が死ぬということは「私が生きている」というどうしようもない現実を突きつけられることなんだな、と思った。