アートとリサーチ ワークショップ

日記 (3月20日)

2016年3月20日

 

どこに旅に行くべきか迷っていたのだが、前日までに色々な人に相談した結果、道南の函館と松前にした。

今回の旅の目的ははっきりしていて、「アイヌ絵」(和人≒北海道に住む大和民族によって描かれたアイヌの絵。アイヌは偶像崇拝の禁止から、基本的に絵を描かないらしい)を見ることだ。函館は、古くから和人が住んでいた道南地方の中心だから、情報や資料が集約されているらしいし、松前はかつて松前藩がおかれた、まさに和人による北海道支配の拠点であった場所だ。そこに行けば何かあるだろう、という期待もあった。何もなくても行っておく義務があると考えた。

全体の予定としては、まず一日目は函館の博物館などを見て午後は図書館の資料を閲覧。二日目は松前に行って、もし必要があれば泊り、三日目はまた函館で、前日までに新たに得た情報を元に博物館などを見る、という風なつもりでいた。

札幌からは深夜の高速バスで向かい、帰りも深夜の高速バスで帰ってくる。

 

函館市中央図書館には、幕末の北方関係資料がたくさんあることが分かっていたので、高速バスとホテルの予約をした後で、電話で図書館の閉架資料や貴重資料の閲覧申し込みをした。初めてだったので緊張して、「よろしくお願いします」を噛んだりしたが、電話口で資料名などを伝えると閲覧可能かすぐ確認してくれる。意外と簡単に済んだ。一安心だ。

 

そこで問題になってくるのがカメラだ。私は古い小さなデジカメと携帯のカメラを普段使っているのだが、画質がほとんど変わらないこともあってもっぱら携帯を使っていた。しかし、貴重資料をせっかく出していただいて、携帯のカメラで撮るというのは気が引けた。

そこで、デジタル一眼レフを買うことにした。中古のカメラ屋に駆け込み、主な用途だけは伝えた。カメラに関しては、私はずぶの素人なので、「何にも分からないので」と宣言し、あとはお任せした。デジタル一眼レフは人気で入荷してもすぐ売れるそうだ。たまたま運よく在ったカメラ本体とレンズの組み合わせで、出してもらった。値段的にも思ったより安く、即決だった。店主はやさしい感じの人で、おまけでSDカードを付けてくれたりした。

私は持ってるものを落としたり歩いていて電柱にぶつかったりすることの多いたちだと自分で分かっている。つまり注意散漫なので、カメラという精密機械を買う際には一緒に丈夫な入れ物を買うのはもはや義務だ。中古カメラ屋の店主の勧めに従い、ヨドバシカメラに行って、買った中古カメラがニコンだったので、ニコンのブースに居た店員のおねえさんに声をかけた。

おねえさんはおそらく本当にカメラが好きなのであろう、そして入社して日が浅いのであろう。かなり適当な敬語で友だちに話すみたいにして一生懸命にかばんを選んでくれた。

私はカメラにフィットするサイズのものにすれば良いと思っていたのだが、「絶対付属品が増えるから大きめのを買ったほうがいい」と熱弁され、それは営業トークなのか趣味人の本音なのか判断がつかなかったが、結局考えていたのより大きめのにした。

 

閑話休題。

その後天神山に一度戻り、準備と夕食を済ませ、22時には出発した。札幌市営地下鉄の大通駅で下車、バスセンターへ向かう。22時半には着いてしまった。バスの時間まで一時間以上ある。椅子に座って、持ってきた「坂のA字クッキー」を食べながらバスを待つ。23時にはほとんど誰もいなくなった。誰もいないバスセンターの非日常感は、不気味でもありながら、私をわくわくさせるものであった。23時20分頃には最終のバスも終わった。するとおっさんがやって来て急に「出て行っていただきたい」と、のたまう。締め出された。500メートル美術館のある地下通路に逃げ込むも、寒い寒い。風邪を引きそうだ。  携帯見て遊んでいたらあっという間に出発5分前になった。急いで乗車。長時間の高速バスは去年福島に行って以来で、前に乗ったのは昼間だったので、深夜に乗るのは数年前網走に行って以来かもしれない。高速バスは嫌いではないのだが、乗車後の疲れを思うとげんなりする。  23時50分、出発。一通りの説明を終え、ドライバーが車内の電気を消す。暗い。寝る時間だ。とたんに前の座席のやつが勝手に椅子下げやがった。椅子にかけてあったカバンが眼の前に迫ってくる。狭い。イラッとしたが、すぐ気持ちを切り替えて寝ることに集中する。途中、後ろの座席の親父のいびきが大きくて何度か起きたりしたが、だいたい寝た。3~4時間は寝られた。